『調教LOVE』は、私が初めて出会ったみきとPの曲であり、初期のみきとPの曲で最も好きな曲です。
何故『調教LOVE』が初期みきとPの中で最も素晴らしいと感じているか、その所以をお話ししていきたいと思います。
ギターはロックンロールそのもの
『みきぺぢお』の1曲目の『みきとP』のミニマルなエレクトリックピアノ主体の構成とは相異なって、水を得た魚のようにイキイキしたギター演奏を聴くことが出来ます。
全体を通して聴けるドライなテレキャスターのクランチサウンドは、ロック以外の何物でも無いですし、特にギターソロパートでの右側のバッキングギターはオールドスクールなフレーズを弾いていますし、小さめのキャビネットで箱鳴らしした時のようなサウンドに仕上げているあたりも60年代末期を感じさせます。
ギターソロそのものも意味で古臭さを感じさせます。
忙しなく音が右から左へと動いて、悪戯に左右にパン振りする様でジミヘンを思い出した人もいるのはないでしょうか。少なくとも私はそういう当時の匂いを感じました。(ボーカルがやけにルーミーなのもジミヘンの匂いを感じた1つかもしれません。)
かわいいmikiちゃんによって途端にポップになる
上記では本曲のロックさをお話ししましたが、この曲はロックかというと、総じてはポップです。
mikiちゃんが、作者に向けて『調教ちゃんとして!』(ボカロを打ち込んだ後に人間らしく聞こえるよう調整すること)という「こっち向いてよダーリン」な歌詞なのですが、それがまたR&Bっぽくて渋い。
更に2番ではみきとPの作家力がめっちゃくちゃ出てきます。
mikiちゃんが教訓を伝える体で進むのですが、「ついでにこっちもどうぞ”miki mikiちゃんの格言”」と文脈が大きく変わるところが素晴らしいなといつも思います。どうしたらそこにその言葉入るのか。
既に映像が頭の中にあって、それを曲に興しているようにすら思えてきます。フィルムスコアってやつです。
サビ前まではドラム4つ打ち中心のロックチューンを思わせるのですが、サビでは一転してリズム隊がジャズよりに落ち着きます。
この緩急がmikiちゃんがロマンスな雰囲気に頑張ってしようとしてるのかなと思わせてくれて可愛げがありますし、「I need you I want you」という常套句から始まったかと思いきや「調教LOVEランドで」という突拍子もない言葉が出てきてふわふわした感じを受けます。
その後も2番はずっとそのキュートっぷりに引っ張られたままです。
ベースラインを聴いて欲しい
この曲で特筆すべきは、やっぱりベースラインだと思います。
注意して聴くと、めっちゃ遊んでる様子がわかると思います。
個人的にはやはり2番のフィルムスコア的なアレンジになっているところのベースラインが好きです。ボーカルの感情の起伏を曲全体で表現するためにベースも同じように遊び心ある動き方をしています。こうやってレビューを書くために何度も聴きなおしていてもなお「ベースこんなことやってたんか」と発見があります。
最近良いヘッドホンに出会えたからというのもあるかもしれません。ぜひ皆さんも。めっちゃ高いですが。(露骨)
みきとPの調教LOVEっぷり
みきとPのボカロ曲は変態っぷりの綺麗な歌わせかたなのですが、この時代から既に調教変態です。
故にこの曲からものすごい熱量を感じたのは必然なのかもしれません。
- 「XXXしたいの」の「の」の終わり方のところ
- 「神調教は1日にしてならず」の後の「う〜」と伸ばした後のちょっとした上がり方
- Cメロのウィスパーな歌い方
- 最終サビのリズム隊がウォーキングベースになって落ち着くとこの「調教しよ 調教しよ」の合いの手の後の「ギュッと手を繋いで」の「ギュッと」の部分
後記
初期みきとPで1番好きな曲のレビューでした。
この曲が図らずとも初めて出会ったみきとPの曲で、当時は言語化できなかったものの、直感で気に入って即マイリスに入れた記憶があります。
完成度の高さは、当時ニコニコ動画の世界の新着動画で完走したことでも証明されています。
再録するならば、ぜひ生バンドで演ってほしいです。